私の知っている、細かなことさえも知っている場所が変わっていく。それを実感すると、自分がどの街にも属せずに宙ぶらりんでいるような気がする。

歩いた街にも属した街にも穏やかな時間が流れているといいな、と満員電車の中で想っている。

 

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(2017.9.23 白木谷)

 

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(2019.11.29 笹方)


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(2020.4.14 大栃)


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(2020.12.20 大豊)



 

撮影した日時と場所、記録されるのスマホの便利なところ。

2023.5.3-5.5 東北

5月3日

 

朝4時起床。5時に家を出た。いつもの如く一人旅が始まる。上野からグリーン車に乗って水戸へ。

8時ちょうどに水戸着。ずっと見たかった配水塔へ。水戸の配水塔はとてもキュートな見た目をしている。非常に可愛い。愛らしい。

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配水塔を見に来たが、あくまでも水戸は通過点に過ぎない。駅に戻り9時9分発、いわき行きの電車へと乗り込んだ。電車は徐々に海沿いへと。嫌になるくらい晴れていた。ボックスシートにひとりでのんびりと座っていた。通路挟んで向かいのおばあちゃん達の訛りが可愛かった。

10時48分いわき着。福島入りを果たす。東北はまともに行ったことないのでほぼ初東北。(11月に新潟へ行った時、少しだけ山形に行ったのでほぼ初東北というわけです…)

次の電車まで少し時間があったので、街を赴くままに歩く。

 

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12時14分発、原ノ町行きの電車に乗る。目的地へと。

 

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12時57分、富岡駅着。ここから隣の夜ノ森駅まで歩く。富岡駅の周囲は新しい建物か、何も無い土地。海沿いの道路からは福島第二原子力発電所が見えた。

海沿いを離れて国道6号を歩いた。車は走っているが、歩いている人がいない。富岡を出てから夜ノ森まで誰にも出会わなかった。歩道には草が生い茂っているところも。今年の4月に避難指示が解除されたばかりだった。

 

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国道沿いの店は無論閉まっているし、12年前のまま放置されていた。国道を外れて、夜の森の街中を歩いた。屋根の瓦は落ちたまま、洗濯竿も落ちたまま、置いてある車のタイヤは空気が抜け切っている。ひとりでいるのが不安になるくらいに誰の気配もしない。時間が止まってしまっているようだった。

 

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夜ノ森駅の前まで来るとやっと人がいて、家の片付けをしていた。この街に帰ってきたい人が毎日を紡いでいける街になってほしい。人と在る街が戻ってこれば良い。また街に時間が流れてほしい。ささやかだが祈りを。

 

16時5分発の電車に乗り、16時38分に原ノ町着。今日はここで夜を過ごす。南相馬市も何回も何回もニュースで聞いた場所。

私の旅あるある、その土地のスーパーに行くというやつをして1日を終わらせた。スーパーの店員さんの喋りが東北に来たなぁと思わせる訛りで良かった。

久しぶりにひとりで夜を過ごした。1日を通して見たものの影響もあると思う。不安でなかなか寝付けなかった。

 

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5月4日

新しい日が始まる。例の如く5時台に目が覚め、朝ごはんを食べて7時半にはホテルを後にした。8時2分発仙台行きの電車へ乗り込む。部活着を着た女の子たちが談笑をしていた。

 

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8時38分坂元駅着。海に向かって歩く。シャツ1枚でも汗ばむくらいの日差しと気温だった。もうすぐ夏が来てしまう。腕まくりをして目的地へと歩いた。

震災遺構の中浜小学校へ。

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この辺りはかつて300世帯ほど家があったらしい。今は周りに田畑しかない。塩害のせいで作物を作れるようになったのも昨年から。どうか幸せや喜びが多くあってほしい。

 

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震災の爪痕を辿るのはここまで。ここから内陸部へと入る。笹かまとビールを買って駅のホームで食べた。電車が来るまで10分も無かったので流し込んだ。11時32分、仙台行きの電車へ乗り込む。岩沼で乗り換えをし、東北本線へ。12時26分槻木着。

阿武隈急行に乗り換える。ここに来て初の第三セクター。旅程を立てた時は全部JRだけで行くつもりだったけど、せっかくならと思って乗ることにした。田んぼを縫って走る電車から遠くに熊野岳(おそらく)が見える。こんな景色の中で生きたい。阿武隈川をぼんやり眺めていると何故だか土讃線の大杉〜阿波池田の景色を思い出した。

 

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12時42分、梁川で乗り換え。福島が近づくと果樹林がよく見られた。甲府盆地の圧倒的な果樹林も好きだが、ここも良い。

 

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福島駅で日本酒を1本買い、14時39分発の郡山行きの電車に乗り込む。景色をぼんやり眺めてお酒を飲む時間が好きだ。

15時26分に郡山到着。人が少なくて建物がぽつぽつとしかない場所も好きだが、地方都市も好きだ。個人的には札幌と長岡と岡山が特に好きだ。郡山も好きになった。

 

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10代前半、郡山の友人に手紙をよく書いた。もう連絡を絶ってしまって今はどこで何をしているかもわからないけれど。あの頃書いた手紙はこの街に届いていたんだと不思議な感覚だった。

街中をジグザグ歩いて、クリームボックスを買ってホテルへ。本当は外でご飯食べるつもりだった。けどそれなりに街が賑わっていたので、ご飯を買ってきて部屋で食べた。人が多いの本当に苦手。

焼きしそ巻き、お酒にもご飯にも合う最高。全国で売ってくれ。もしみんなも見かけたら買ってほしい。美味しいので。とても美味しいので。お酒がすすんで酔っ払って気絶するように眠った。

 

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5月5日

例の如く5時半に起きて朝ごはんを食べてチェックアウト。7時15分郡山発の水戸行き、水郡線に乗り込む。水郡線て言葉の響きが可愛いよね。ずっと乗りたかったので嬉しい。

 

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電車に揺られるのが好きだ。どこへでも行ける気がして好きだ。どこにも着かない電車に乗りたい。ただ運ばれていたい。

旅をすると孤独であることに安心する。知らない街にいると安心する。自分が自分であることに吐き気がする。妥協点も自分なりに見つけた、折り合いもつけた、諦めもついた。上手く生きられなくていいから、大事な人の手を取って生きていきたい。田んぼに反射する景色が美しい。季節と共にありたい。

 

9時50分、山方宿着。街を練り歩く。ここは宿場町。宿場町も好きだ。私、好きなものがたくさんあるのかも。汗をかきながら歩いた。

 

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好きな街がまたひとつ増えた。素敵な道や建物を見た。大事にしたい記憶が増えていくのは嬉しいし、忘れてしまうのは怖い。

 

11時50分の電車に乗って山方宿をあとにした。水戸と土浦を経由して電車は今都内を走っている。

偶然GWがあったから旅に出られたけど、これからはなかなか難しそう。合間を縫って旅をしていこう。生きていれば旅は終わるし、始められるので。

次福島へ行く時は、只見線に乗りたい。あと猪苗代湖と七日町に行きたい。

 

生きるためにまた旅をしよう。

生姜のような痺れ

自分の生きづらさ、誰かのせいにしたいけど全部自分起因。生きている間は延々とこの生きづらさと付き合っていかなければならないのが悲しい。

その中でも時々、どうしようもなく生きたくなる出来事があったりする。

日曜日、ユニゾンのライブだった。1月ぶりのユニゾンだった。毎回泣いているんだけど笑、自分でも驚くくらい泣いた。肩を震わせてぼろぼろ泣いた。

自分のこと、諦めきれなかったから今日日まで生きてきた。それだけでも充分だよって言われたような気がした日だった。まっすぐな光の日。命はある、それっぽっちのことでもおみやげになるから。いつかのどこかでたまに振り返るね。

 

私という人間はクソだし、人生はハードだし、ポップに生きたかったのに真逆をいっているし…

そんなくそみたいな人生の中で、どんなにささやかでもいいから希望やら祈りやらを見つけて生きていこうと思っています。

またぐらついたり悪くなってしまったら寄りかかれる人には全力で頼っていこうと思う。その時はまたどうぞ宜しく。ということで12月からの精神科通いが終わりました。まただめになったら病院の力も薬の力も借りようと思う。

 

話変わって今日から少しだけ旅に出ます。言葉少なな旅になりそうな気がしている。

ぼちぼちと写真あげたりするので、気が向いたら見に来てね。

では北上します。

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slave

長い長い学生期間を終え、社会人になった。まだ3週間目だが。

 

覚えることが嫌になるほど多くて毎日勉強をしている日々だけど、個人的にはいいところに配属してもらえたな〜と思っている。覚えることは多いけどね。覚えること多すぎるけどね!

 

同期は10人以上いて、男の人が割合としては多いが、女の人も自分含め4人いる。それなりにコミュニケーションをとっているが、人間どうしても社交性が死に絶えている日がある(と思う。)

ここ最近はずっとそうだけど、同期の女の子たちがエレベーターを待っているのを見つけて一旦トイレに戻ったり、前を歩いているのを見つけて裏道を使って先回りしている。そこに割ける力が今は無いのでね…

 

色んな体力が無い時、どこに力を使えるかは人それぞれだと思う。私は社会的なところに一切力を割きたくなくなる。だから私は奨学金の申し込みも忘れるし、賃貸の更新書類も忘れるし、周りの人を睨んだりする。ダメだなぁと思っているだけ上出来だと思ってほしい…

 

「もっと出来るはずだ」とか「自分がどこまでやれるか知りたい」とか、いわゆる社会的地位を貪欲に求めて生きている人が世の中には一定数いる。私はそんなものから最も遠いところで生きている。私が求めているのは、友達と目的もなく歩いたり、恋人より先に目が覚めて寝顔をぼんやり眺めたり、知らない土地を右も左も分からず歩いたり。そういうことだけでもう充分。それ以上何も欲しくない。

私のような人ばかりだと人類は未だ旧石器時代的な生活を送っていたかもしれないので、向上心の塊の人々には感謝をしなければならない。ありがとう、ありがとう…

そんな向上心の塊の人から差し入れてもらったチョコを食べながらこれを書いています。

 

最後にこの前作った美味し美味しご飯の写真でも見てください。コンビーフクリームチーズと醤油と黒胡椒混ぜたやつ大好き。

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新潟弾丸旅

3月23日、朝4時起床。5時過ぎに家を出た。18きっぷを片手に…

 

新橋から高崎までグリーン車に乗った。1000円課金で通勤ラッシュで混雑した電車に乗らなくて済むのはありがたい。
隣の人が貧乏ゆすりをしながらPCを叩いていた。私はその横でレモンサワーを一缶開けた。癖になる快楽。

 

高崎から上越線に入る。新潟に行くのは3回目だ。去年の8月と11月。高揚と鬱屈。対照的であって、なんだか類似もしている。そんな今まで。

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水上での乗り換えももう慣れた。颯爽とボックスシートを確保した。
ボックスシートからしか得られない栄養がある。

 

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越後湯沢を出たあたりで急に電車が止まった。車内アナウンスで「風の影響でこの先速度を落としての運行となります。」今回は旅程がひとつでも崩れるとまずいのだ。車内で焦って時刻表を調べた。そしたらすぐに「風の影響は大丈夫とのことなので通常の速度で運転いたします。」変な汗が出たけど、なんとか乗り換えできそうで安心した。車内の大学生はスキーウェアを着て談笑をしていた。外は長い冬の名残が薄汚れて積もっていた。


六日町で乗り換え。改札内ほくほく線の切符売り場で美佐島行きの切符を購入。
今回の目的地のひとつ。11月の新潟旅で行き損ねた場所。ほくほく線、名前も車内も好き。

 

美佐島駅で降りるのは私だけではなく、親子も一緒だった。私はひとりだ。
こういうところはなるだけひとりで訪れたい。誰かと行くのも素敵だと思うけれど、ひとりだということに意味がある。そんな気がする。

 

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駅は面白いつくりをしていて、絶妙に心をくすぐる。
待合室の中にある駅ノートを眺めた。
知らない誰かの言葉にクスッと笑ったり、驚いたり。許されるのであれば、こういうことだけをして生きていきたい。
駅の周りを少し歩いた。民家はあれど何かしら観光地があるわけではない。でもそれが良い。私はそんな場所が好きだ。道端に雪の塊とつくしとふきのとうが同居していて、少し不思議な気持ちになる。これがこの場所の春なのだ。アウターが邪魔になるくらいの春の心地だった。

 

 

駅に戻って電車に乗り十日町へ。ここは11月にも少しだけ訪れていた場所。季節が変われば街も変わって見えたりする。お寿司屋さんへ。マップの指示に従って歩いたらよくわからない畦道を歩かされた。ずっと畦道だけを歩きたい。


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お寿司屋さんで軽くビールを飲み、お寿司を欲望のままに食べた。鮪の色が綺麗で感動した。新潟、お魚美味しい。(高知も美味しい。)
少しフワッとした足で駅の方へ戻る。十日町は駅を挟んで東と西で少し雰囲気が違うように思う。

 

十日町から飯山線に乗り込む。初飯山線越後川口上越線に戻る。乗り換えをして長岡へ。長岡は高知市くらいに安心感がある。
今回の最終目的。長岡市にある旧中島浄水場配水塔。これを見るために来たのだ。

 

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素敵すぎないかい?この建物たちは水道公園としてあるので、塔の下あたりで小学生が遊んでいる。この子たちにいつかこの景色を懐かしく、恋しく思ったりする日が来る。そういうことを思うだけで馬鹿みたいに心の奥の変なところがぎゅっとする。君たちの育った街は素敵なんだ。

 

信濃川沿いの土手を「帰りたくないよ〜。みょーーーーん」と奇声をあげて歩いた。
街中をぶつぶつ言いながら歩いていたら後ろから人が来ていて、ひとりごとは極力控えよう…と少し反省した。

 

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16時頃に長岡駅に戻ってきた。恋人が新潟出身なので、帰省から戻る彼と合流して東京に戻るというやつ。私が長岡にいるのが変らしい。一緒に夕飯を食べて19時前の新幹線に乗って帰った。

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新幹線の車内でいろいろ考えていた。
苦い記憶ばかりがこの場所に定着するのが嫌で、今回恋人の帰省に合わせて新潟に行くことにしたのだ。始発在来線の日帰りというイカれたスケジュールにしてしまったけれど、それでも今回行くことにして良かった。
これも自分のことを掬う行為のひとつなのだ。そしてまたいつかこの日のことをどこかで拾い上げる日が来れば良い。