5月3日
朝4時起床。5時に家を出た。いつもの如く一人旅が始まる。上野からグリーン車に乗って水戸へ。
8時ちょうどに水戸着。ずっと見たかった配水塔へ。水戸の配水塔はとてもキュートな見た目をしている。非常に可愛い。愛らしい。
配水塔を見に来たが、あくまでも水戸は通過点に過ぎない。駅に戻り9時9分発、いわき行きの電車へと乗り込んだ。電車は徐々に海沿いへと。嫌になるくらい晴れていた。ボックスシートにひとりでのんびりと座っていた。通路挟んで向かいのおばあちゃん達の訛りが可愛かった。
10時48分いわき着。福島入りを果たす。東北はまともに行ったことないのでほぼ初東北。(11月に新潟へ行った時、少しだけ山形に行ったのでほぼ初東北というわけです…)
次の電車まで少し時間があったので、街を赴くままに歩く。
12時14分発、原ノ町行きの電車に乗る。目的地へと。
12時57分、富岡駅着。ここから隣の夜ノ森駅まで歩く。富岡駅の周囲は新しい建物か、何も無い土地。海沿いの道路からは福島第二原子力発電所が見えた。
海沿いを離れて国道6号を歩いた。車は走っているが、歩いている人がいない。富岡を出てから夜ノ森まで誰にも出会わなかった。歩道には草が生い茂っているところも。今年の4月に避難指示が解除されたばかりだった。
国道沿いの店は無論閉まっているし、12年前のまま放置されていた。国道を外れて、夜の森の街中を歩いた。屋根の瓦は落ちたまま、洗濯竿も落ちたまま、置いてある車のタイヤは空気が抜け切っている。ひとりでいるのが不安になるくらいに誰の気配もしない。時間が止まってしまっているようだった。
夜ノ森駅の前まで来るとやっと人がいて、家の片付けをしていた。この街に帰ってきたい人が毎日を紡いでいける街になってほしい。人と在る街が戻ってこれば良い。また街に時間が流れてほしい。ささやかだが祈りを。
16時5分発の電車に乗り、16時38分に原ノ町着。今日はここで夜を過ごす。南相馬市も何回も何回もニュースで聞いた場所。
私の旅あるある、その土地のスーパーに行くというやつをして1日を終わらせた。スーパーの店員さんの喋りが東北に来たなぁと思わせる訛りで良かった。
久しぶりにひとりで夜を過ごした。1日を通して見たものの影響もあると思う。不安でなかなか寝付けなかった。
5月4日
新しい日が始まる。例の如く5時台に目が覚め、朝ごはんを食べて7時半にはホテルを後にした。8時2分発仙台行きの電車へ乗り込む。部活着を着た女の子たちが談笑をしていた。
8時38分坂元駅着。海に向かって歩く。シャツ1枚でも汗ばむくらいの日差しと気温だった。もうすぐ夏が来てしまう。腕まくりをして目的地へと歩いた。
震災遺構の中浜小学校へ。
この辺りはかつて300世帯ほど家があったらしい。今は周りに田畑しかない。塩害のせいで作物を作れるようになったのも昨年から。どうか幸せや喜びが多くあってほしい。
震災の爪痕を辿るのはここまで。ここから内陸部へと入る。笹かまとビールを買って駅のホームで食べた。電車が来るまで10分も無かったので流し込んだ。11時32分、仙台行きの電車へ乗り込む。岩沼で乗り換えをし、東北本線へ。12時26分槻木着。
阿武隈急行に乗り換える。ここに来て初の第三セクター。旅程を立てた時は全部JRだけで行くつもりだったけど、せっかくならと思って乗ることにした。田んぼを縫って走る電車から遠くに熊野岳(おそらく)が見える。こんな景色の中で生きたい。阿武隈川をぼんやり眺めていると何故だか土讃線の大杉〜阿波池田の景色を思い出した。
12時42分、梁川で乗り換え。福島が近づくと果樹林がよく見られた。甲府盆地の圧倒的な果樹林も好きだが、ここも良い。
福島駅で日本酒を1本買い、14時39分発の郡山行きの電車に乗り込む。景色をぼんやり眺めてお酒を飲む時間が好きだ。
15時26分に郡山到着。人が少なくて建物がぽつぽつとしかない場所も好きだが、地方都市も好きだ。個人的には札幌と長岡と岡山が特に好きだ。郡山も好きになった。
10代前半、郡山の友人に手紙をよく書いた。もう連絡を絶ってしまって今はどこで何をしているかもわからないけれど。あの頃書いた手紙はこの街に届いていたんだと不思議な感覚だった。
街中をジグザグ歩いて、クリームボックスを買ってホテルへ。本当は外でご飯食べるつもりだった。けどそれなりに街が賑わっていたので、ご飯を買ってきて部屋で食べた。人が多いの本当に苦手。
焼きしそ巻き、お酒にもご飯にも合う最高。全国で売ってくれ。もしみんなも見かけたら買ってほしい。美味しいので。とても美味しいので。お酒がすすんで酔っ払って気絶するように眠った。
5月5日
例の如く5時半に起きて朝ごはんを食べてチェックアウト。7時15分郡山発の水戸行き、水郡線に乗り込む。水郡線て言葉の響きが可愛いよね。ずっと乗りたかったので嬉しい。
電車に揺られるのが好きだ。どこへでも行ける気がして好きだ。どこにも着かない電車に乗りたい。ただ運ばれていたい。
旅をすると孤独であることに安心する。知らない街にいると安心する。自分が自分であることに吐き気がする。妥協点も自分なりに見つけた、折り合いもつけた、諦めもついた。上手く生きられなくていいから、大事な人の手を取って生きていきたい。田んぼに反射する景色が美しい。季節と共にありたい。
9時50分、山方宿着。街を練り歩く。ここは宿場町。宿場町も好きだ。私、好きなものがたくさんあるのかも。汗をかきながら歩いた。
好きな街がまたひとつ増えた。素敵な道や建物を見た。大事にしたい記憶が増えていくのは嬉しいし、忘れてしまうのは怖い。
11時50分の電車に乗って山方宿をあとにした。水戸と土浦を経由して電車は今都内を走っている。
偶然GWがあったから旅に出られたけど、これからはなかなか難しそう。合間を縫って旅をしていこう。生きていれば旅は終わるし、始められるので。
次福島へ行く時は、只見線に乗りたい。あと猪苗代湖と七日町に行きたい。
生きるためにまた旅をしよう。